材料力学検定試験

材料力学検定試験について

 

平成26年11月28日

 各 位

 

NPO法人 固体の力学研究会

 理事長  畑  俊 明

 

 

材料力学検定試験について

 1.趣旨

 

 材料力学は機械系学科の学生にとって最も重要な専門科目であり,材料力学に関する基礎知識を持ち,その知識を応用できる能力は製造業において必須です.当法人の会員の多くは大学で材料力学の授業を担当し,演習問題を解かせるなど色々と工夫して授業を行っていますが,残念ながら材料力学の知識を十分に修得して卒業した学生は多くないと言わざるを得ません.

 

一方,製造業は高度化と世界的な展開が益々進み,最早,日本企業でも大卒者を採用する際に国籍を問わないという時代を迎えつつあります.つまり,近い内に,新卒者の採用選考において,我が国の大学生は他国の大学生と同条件の下で競争せざるを得ない状況に追い込まれるであろうことは想像に難くありません.このような社会的変化に適応するために私共が出来ることは,大学の機械系学科に所属する学生などを対象に,権威ある機関が世界標準の材料力学検定試験を実施して合格者を認定する制度を設け,学生の知識と学力を出来るだけ客観的に評価する仕組みを創出することです.

 

 このような背景から,私共は機械系の大学学部生および大学院生を対象とする材料力学検定試験を企画し,今年度中の試行を目指して鋭意準備を進めております.その際,教育成果を評価するという観点から,企業の技術者にも是非参画して戴き,新入社員に必要な材料力学の知識と学力の水準に適った検定試験問題が作成出来れば,教育界に留まらず,産業界にとっても有益であると確信しております.

 

 昨今,大学ランキングが報道されておりますが,概して欧米の大学に比べて我が国の大学は評価が低くなっております.これは,例えば,留学生数や外国人教員数など,評価方法に因るところも大きいのですが,その一方で我が国の大学教育の水準が高くない可能性もあると存じます.その一因として,日本の大学教育にクレジットサイクル(高く評価された者がより良い環境を得られる)の無いことが指摘されております.これは,元々我が国に評価の文化が無いことが主因であると考えられます.このような状況で,社会で必要とされる内容に基づいた検定試験は意義深いと存じます.

 

 ところで,材料力学検定試験のような制度が確立されますと,機械系学科の学生は,授業項目は固よりその内容を超えて積極的に学修する意欲を持つようになり,もって国際的競争力を有する人材の育成に繋がります.さらに,私共が投じる一石が教育界,産業界や学界に広がることを期待しております.

  

2.材料力学検定試験の構想について

 

(1)実施及び認定機関

  当面の間はNPO法人「固体の力学研究会(理事長・畑俊明名誉教授)」を主体として,日本機械学会材料力学部門「弾性数理解析の発展と普及,利用に関する調査研究会」の委員の自発的協力の下に実施する.将来は実施主体を全国的な学術法人,例えば日本機械学会などへ移行することが望ましい.

 

(2)受験対象者

 学部4年生と博士前期課程1年生を主な対象とする.尚,その他の受験希望者を拒むものではない.

 

(3)問題の水準 

・一 級:比較的高度な知識を有するとともに,その知識を統合して活用し多少複雑な構造物も設計できる水準(授業内容を超える範囲も対象とする).

 

・準一級:基礎的な知識を有するとともに,その知識を活用して単純な構造物や部材などが設計できる水準(授業内容の応用的な範囲も対象とする).

 

・二 級:新入社員が修得しておくべき最低限の知識を有するとともに,その知識を製造現場において活用できる水準(授業内容の基礎的な範囲を対象とする).

 

(4)問題の作成 

・毎年度,企業から問題作成協力委員,大学から問題作成委員を適当数選出し,出題範囲を割当てる. 

・問題作成協力委員がそれぞれ1問の草案(問題のアイディア)を作成する. 

・その草案を基に問題作成委員が問題を完成させるとともに,解答例を作成し,出題範囲ごとに一級,準一級及び二級に分類する. 

・大学から適当数の問題編集委員を選出し,一級,準一級及び二級の検定試験問題を編集する.

  

3.材料力学検定試験の試行結果について

 

(1)平成23年度 

・実施期間:平成24年1月5日(木)〜12日(木) 

・実施大学数:7大学 

・受験者数:69名 

・合格者数:4名 

・受験者への結果通知:平成24年2月下旬 

・合格者へ合格証書授与:平成24年2月下旬 

・NPO法人「固体の力学研究会」のウェブでの情報開示:平成24年3月下旬
http://solid-mechanics.org/

 

(2)平成24年度 

・実施期間:平成24年12月17日(月)〜平成25年1月11日(金) 

・実施大学数:7大学 

・受験者数:67名 

・合格者数:0名 

・受験者への結果通知:平成25年2月下旬 

・NPO法人「固体の力学研究会」のウェブでの情報開示:平成25年3月下旬
http://solid-mechanics.org/

 

(3)平成25年度 

・実施期間:平成25年12月24日(月)〜平成26年1月10日(金) 

・実施大学数:7大学 

・受験者数:78名 

・合格者数:2名 

・受験者への結果通知:平成26年2月下旬 

・合格者へ合格証書授与:平成26年2月下旬 

・NPO法人「固体の力学研究会」のウェブでの情報開示:平成26年3月下旬
http://solid-mechanics.org/

 

4.平成26年度材料力学検定試験の実施について 

 平成25年度に引き続き,二級の検定試験を実施する.尚,今年度作成した問題は,企業の技術者の協力の下に,大卒新入社員に求められる必須の水準になっている.平成25年度の検定試験では計算問題を増やし,教科書等の資料を持ち込み可とする等を改善した結果,合格者を2名出すことができた.今年度の問題作成においてもより一層の改善を図った.従って,学生が社会から求められる水準を知るために,また自身の学力を測るためにも,本検定試験は有意義であると思われるので,積極的に学生諸君へ受験を勧めて戴ければ幸いである.

 

(1)問題区分は「引張と圧縮はりの曲げはりのたわみねじり組合せ応力柱の座屈」で,問題数は6問である. 

(2)解答時間は120分で,満点は120点である. 

(3)検定試験を実施する大学等は,実施協力委員を1名選出する. 

(4)各大学等の実施協力委員は別添の「検定試験の案内」を作成し,学生へ検定試験の受験を勧める. 

(5)各大学等の実施協力委員は,12月24日(水)迄に,当NPO法人へ検定試験を実施する旨を通知する. 

(6)当NPO法人は実施通知を受取った後,速やかに各大学等の実施協力委員へ問題用紙と解答用紙をPDFファイルで送付する. 

(7)各大学等の実施協力委員は問題用紙と解答用紙を必要部数だけ用意して,検定試験を厳正に実施し,試験終了時に問題用紙と解答用紙を全て回収する.その後,速やかに解答用紙を当NPO法人へ郵送する.尚,受験者から問題用紙や解答例が欲しいとの要望があった場合は,(10)を知らせること. 

(8)2月末までに,当NPO法人は採点を完了し,合否を決定した後,各大学等の実施協力委員へ通知する. 

(9)3月末までに,各大学等の実施協力委員が受験者へ採点結果を通知するとともに,合格者にNPO法人「固体の力学研究会」理事長名で合格証書を授与する. 

10)3月末までに,合格者情報,試験問題と解答例,及び実施結果のまとめなどとともに,実施に関わった委員名などをNPO法人「固体の力学研究会」のウェブで公表する. 

11受験料は徴収しない.

 

5.平成27年度以降の材料力学検定試験について 

 今後の数年間,検定試験の在り方や内容を検討しつつ改善を図り,継続して実施する.尚,受験料については,受験状況を注視し徴収できるような状況になった年度から必要経費分を徴収する.

  

以 上