谷川義信大阪府立大学名誉教授への追悼文

 

平成30年(2018年)8月19日,谷川義信先生が永眠されました.
先生のご冥福をお祈りし哀悼の意を表します.

 

 

谷川先生への野田直剛先生からの追悼文

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  (左端が谷川先生)

 

谷川義信先生の御霊に謹んで心から哀悼の意を表します。

 

谷川義信先生は誠実・実直で温厚な性格で研究仲間から尊敬と信頼を受けていました。

  

 思えば竹内洋一郎先生の門下生としてお互いに切磋琢磨し、熱応力の研究に邁進されたお姿が目に焼き付いています。順風満帆に研究成果が実を結び、日本を代表する熱応力の研究者として世界を股にかけてご活躍なされました。

 

 

谷川先生の熱応力の研究は() 二次元および三次元の連成熱弾性問題の解析的研究、 ()不均質材料および異方性積層材料の弾性・熱弾性解析、()熱応力緩和型傾斜機能材料の材料組成最適化問題とソフトコンピューティング手法の適用、()圧電熱弾性解析、()電磁熱弾性解析などがあります。これらの成果は国際学術誌に約200編弱が掲載され、世界の熱応力の研究をリードされました。

 

 

 国内においては、研究仲間6人衆(倉茂、畑、谷川、野田、須見、渡辺)が組織した数理弾性力学に関する研究会の中心的存在として、弾性力学および熱弾性力学の数理解析の普及にご尽力されました。その功績が評価され、「弾性力学および熱弾性力学の数理解析に関する一連の功績」で2009年度の日本機械学会材料力学部門の功績賞を受賞されました。

 

 

思い出深い出来事は、研究会で熱応力の国際会議を開催する機運が高まり、研究会を代表し谷川先生と私がRochester工科大学に出向き、Journal of Thermal Stresses の編集委員長のProfessor Hetnarski 先生と相談したことです。相談はとんとん拍子に進み、第一回を1995年に浜松で開催し、第二回を1997年にRochester、第三回を1999年にヨーロッパで開くことが決まりました。現在この熱応力国際会議は2年に1度開催し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ持ち回りの国際会議として定着しております。

 

 

 谷川先生は熱応力国際会議の運営委員を務められ、20016月に第4回熱応力国際会議を大阪で主催しました。海外から世界的研究者が多数参加して、卓越した会議運営に対し外国人研究者から絶大なる称賛を受けました。またJournal of Thermal Stressesの編集委員を務められ、熱応力の普及にも努められました。これらの国際的な活動が高く評価され、2007年に熱応力国際会議運営団体より「熱応力に関する固体力学分野における業績」に関する表彰を受けました。

 

 

この様に国際的に活躍された谷川先生にもうお会いできないかと思うと惜別の念に駆られます。

 

 

谷川先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

 

 

2018919

 

  

静岡大学名誉教授

 

  

野田直剛

 

 

  

谷川先生への赤井富一様からの追悼文

  

谷川先生と共に過ごした時間は、楽しい事ばかりです。ウイーンでの昼さがりの喫茶店、木漏れ日の下で、ゆったりとしたコーヒータイム。そして、生ビールの飲み比べをした岩手の牧場、今はもうなくなった国際貿易センタービルの屋上、毎年の羽衣でのバーベキュー等などと鮮明に残っています。

 

宮司をされていた烏帽子形神社をスケッチさせてもらいました。先生もお元気でした。この日は、穏やかな日差しが神社の森に降り注いでいました。

 

 先生には、いろいろとご指導いただき、ありがとうございました。

 

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

  

                                                                赤井富一

 

 

   

  

 

 

 左:国際貿易センタービルの屋上にて 右が赤井氏(1997614日)

 右:ICTS1999 in Poland 後の訪問地ウイーンで(1999619日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

谷川先生への大多尾義弘様河村隆介様・石原正行様からの追悼文

 

 


           (中央が故谷川名誉教授) 

 

谷川義信大阪府立大学名誉教授の回想と追悼

  

谷川義信先生は、1968年(昭和43年)に大阪府立大学工学部助手に採用され、1989年(平成元年)に教授に昇任、2007年(平成19年)に定年退職されました。谷川先生は大阪府立大学で39年に亘って熱心に機械工学の教育、研究に当たり、数多くの優れた人材を育成されました。谷川先生は、主宰された研究室から18年間に140名余りの卒業生を輩出されました。谷川先生は機械工学科の学科主任を務められ、学科の発展に貢献されました。また、工学研究科や大学の各種委員長及び委員を務められ、大学管理運営に尽くされました。特に、谷川先生が手掛けた大韓民国国立金烏工科大学との長年の学術交流事業に対して、同大学から感謝牌が授与されました。谷川先生は、熱応力に関する国際専門誌Journal of Thermal Stressesの編集委員を務められ、2001年(平成13年)には、第4回熱応力国際会議を大阪で開催、組織委員長を務められました。谷川先生は、1995年(平成7年)に浜松で開催された第1回熱応力国際会議で基調講演を行われるとともに、常に、国際組織委員会の委員長、委員として企画運営に携わられました。国内の学会においても、谷川先生は理事、評議員、委員、研究分科会の主査等を歴任されました。谷川先生は、弾性及び熱弾性問題をはじめとする応用力学の幅広い分野において、教育、研究に力を注がれました。総計約250編を超える論文(国際会議プロシーディングスを含む)、材料力学、弾性力学、計算力学などの教科書、熱応力、弾性及び熱応力の理論に関する専門書が出版されました。谷川先生の精力的な研究活動は、国内外で高い評価を受けています。2007年(平成19年)には、日本機械学会関西支部より貢献賞、ICTSInternational Congress on Thermal Stresses)より熱応力分野における業績に関して表彰状、2009年度(平成21年度)には、日本機械学会材料力学部門より功績賞が授与されました。このように、大阪府立大学に在職中、谷川先生は、教育、研究、大学運営、国際交流、学会の発展に貢献されました。

 

谷川先生は、常に、温かい真心を持って学生を導かれました。谷川先生は、研究室の学生が楽しく和やかな雰囲気の中で過ごすことができ、かつ研究や学業に向上心を持って取り組むことができることを目標にされました。谷川先生は卒業生との絆をとても大切にされました。毎年、ゴールデンウィークに開催された研究室同窓会に、家族を連れた多くの卒業生が集いました。バーベキューとお酒を嗜まれ、谷川先生は卒業生や学生との時間を過ごされました。谷川先生が定年退職された後、研究室同窓会は研究室の恒例行事として受け継がれています。谷川先生と一緒に過ごした学生時代の良き思い出や、研究と学業に専念した経験は、成長を促し、卒業生にとって現在の自分自身を支える自信の源となっています。2005年(平成17年)にご病気により手術を受けられた後、谷川先生は通院治療を受けられながら、大学の職務を全うされました。定年退職後、谷川先生は、烏帽子形八幡神社の宮司として、奥様の温かい支えを受けられながら、地域貢献に誠心誠意尽くされました。また、谷川先生は3年前まで研究室の恒例の同窓会行事に参加されました。これまで、谷川先生は多くの薬剤による治療を受けられました。しかしながら、ご病気の進行につれ、有効な薬剤は尽きてしまいました。2018年(平成30年)2月に容態は急変し、先生の体力と気力は尽き果ててしまいました。奥様と二人のご息女様のご家族に見守られる中、2018年(平成30年)819日に谷川義信先生は享年76歳で永眠されました。

 

ここに、谷川先生のご冥福をお祈りし、哀悼の意を表します。

 

 

 

大多尾 義弘、大阪府立大学教授

 

河村 隆介、宮崎大学教授

 

石原 正行、大阪府立大学准教授

 

 

 

 

谷川先生への長山和樹様からの追悼文

 

 

谷川先生との出会いは、私が3回生(平成3年)の夏でした。今は大々的に、世界の大学が参加する形で開催されているロボットコンテストですが、当時は第2回目で、まだマイナーなイベントでした。私は、機械工学科のサークルに所属し、そのコンテストに出場すべく、ロボットのアイディアを考えていました。その際、谷川先生に、飛び込みでご相談に上がり、構造設計の考え方などについてアドバイスを頂いたことが最初の出会いでした。今から思えば稚拙な応力集中に関する質問をしたことを今でも鮮明に覚えていますが、谷川先生は、レベルの低い私に、優しく指導を頂きました。頂いたアイディアをもとに、書類選考を突破し、NHK放送センターに行き、大会に出場を果たしています。そのご縁があり、4回生の講座選定の際に、迷わず6講座(谷川先生の研究室)を選びました。

 

大学院1年生の際には、山形で開催された学会に同行させていただき、当時まだ珍しかった山形新幹線に乗せて頂いたことを覚えています。当時、私は(散財して)貧乏でお金がなく、旅費を谷川先生に出していただいたこと、今思えば、大変申し訳なく存じます。大学4年~大学院修士の間3年間では、府大池のほとりや、河内長野であったのでしょうか、川のほとりでの講座バーベキューを立ち上げました。これも谷川先生のご理解があり、始めたイベントで、現在もなお、続いている伝統ある行事になりました。卒業後もたびたび研究室を訪問した際にも、いつも、学生時代と変わらず接していただき、本当にうれしく存じます。

 

晩年、お体を壊しておられることは耳に入っておりましたが、先生の訃報を聞いたときには、非常に悲しく、残念で、上述の昔のことを、思い出さずにはいられませんでした。今、私が、なんとか、メーカーの技術者として社会で活動できているのは、研究室で過ごした3年間があってこそ、と深く感謝しております。

 

心から、ご冥福をお祈りしております。

 

長山 和樹 平成6年度修了(平成4年度卒業)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 谷川先生への井上恵一様からの追悼文

 

 

谷川先生のご指導のもと、大阪府立大学の研究室で日々勉強したのももう30年も前のこととなってしまいました。私自身も50歳を過ぎ、時折、あの当時の写真を見返して、懐かしく思うこともあります。

 

在学中に学んだことは、その後の社会人人生で直接活かせたこともありますし、考え方や学ぶ姿勢など、間接的に活かせたことも多くあります。私の人生にとって大きな変化のあった時期に谷川先生に出会い学べたことは、幸運だったと思います。

 

本当にお世話になり、ありがとうございました。

 

井上 恵一 平成元年度卒業

 

 

 

 機械工学科学外合宿研修の懇親会にて

 

 

 

谷川先生は、平成21年度日本機械学会材料力学部門功績賞を受賞されました。谷川先生は、Journal of Thermal Stresses誌編集者で2001年に熱応力の国際会議を開催された熱応力研究の世界的権威で、多くの優れた熱応力の研究論文を通して、材料力学発展に寄与した功績を評価されてました。

谷川義信大阪府立大学名誉教授略歴
昭和41年大阪府立大学機械工学科卒業,
昭和43年同大大学院修士課程修了,
昭和43年同大助手,
昭和61年同大助教授,
平成元年同大教授。
工学博士
2001年 第4回熱応力国際会議を開催
専門は熱応力・熱変形理論。
著書 15冊・論文 150編。

  

 

NPO法人固体の力学研究会では,故谷川先生の熱応力の黒板での講義をDVDに収録して販売しています.